英国のM&Sのサイトで服を買っても、その荷物を届ける仕組みを担うのはドイツの通販会社Zalando。欧州大陸の22市場で、そんな役割分担が始まっている。Zalandoにとって他店の商売を支える仕事は、もう小さな脇役ではない。
11月3日に公表した7〜9月期決算では、企業向けの物流やソフトウエアを売るB2B部門の調整後営業利益が4220万ユーロとなった。前年同期の2倍を超え、全社の同じ利益指標、1億650万ユーロの約4割を占める。ここでいう調整後は、再編費用や買収関連費用、株式報酬などを除いた数字だ。
対照的に、消費者向け通販を担うB2C部門の調整後営業利益は16%減った。この部門には自ら商品を仕入れて売る事業に加え、他社の出店や広告の事業も入る。会社の説明では、スニーカーを中心とする値下げと、秋冬キャンペーンの前倒しやサッカーW杯関連の広告費が利益を圧迫した。商品が売れれば、そのまま利益も増えるという四半期ではなかった。
一方のB2Bでは、店頭にどの商品を並べるかより、店の裏側をどれだけ任せてもらえるかが売上を左右する。ZEOSは商品を保管し、注文に応じて届ける物流を提供する。SCAYLEは企業が自分のネットショップを運営するためのソフト、Tradebyteは複数の販売先とつなぐ仕組みを売る。Zalandoのアプリで買われた商品だけが対象ではない。
M&Sとの取引を見ると、この違いが分かりやすい。2022年に始まったのは、Zalandoなどの通販サイト経由で売れた商品の物流を任せる関係だった。今年8月の拡大では、欧州大陸22市場におけるM&S自身のネット通販まで対象に加わった。お客を自社サイトに呼べた場合も、配送を担うZalandoには仕事が生まれる。
M&Sは11月4日の半期決算でも、ZEOSへの移行で配送時間と費用が減り始めたと説明した。Zalando側も、7〜9月期のB2B増収の主役は物流だったとする。取扱量が増えることで間接費を効率よく負担でき、物流の採算が改善したという。B2Bの調整後営業利益率は前年同期の7.1%から11.9%に上がった。
買収した会社を足しただけで伸びたのかも、確認しておきたい。昨年7月にABOUT YOUを連結し、傘下のSCAYLEが加わったため、前年同期との比較には連結期間の違いが残る。それでもB2B売上の伸びは、公表値で27.9%、前年も同じ範囲で連結したと仮定する比較用試算で27.2%だった。未監査の試算ではあるが、買収による範囲の違いだけでは増収を説明できない。
この方向は突然現れたわけではない。4〜6月期にもB2Cの調整後営業利益が減る一方、B2Bが伸びていた。今回の決算は、裏方事業の拡大が続き、消費者向けの減益を補っていることを示した。ただし、費用を除く前の全社営業利益は前年同期の4910万ユーロから1310万ユーロへ減少している。大きな再編費用も抱えており、会社全体が順調と読み替えることはできない。
服を探す画面では、M&SとZalandoはそれぞれお客を集める。だが注文後の仕事は、同じ物流網に集められる。Zalandoの決算を読むには、どれだけ自社の売り場で売れたかに加え、他店が売るための仕事をどれだけ引き受けたかを見る必要が出てきた。
SOURCESこの記事の情報源
- Zalando:2026年第3四半期決算発表 ↗ — 一次情報
- Zalando:Q3 2026財務報告書 ↗ — 一次情報
- Zalando:Q3 2026決算説明資料 ↗ — 一次情報
- Zalando:Q3 2026ファクトシート ↗ — 一次情報
- Reuters(AOL配信):値下げでZalandoの粗利益率低下 ↗ — 報道・専門媒体
- M&S:欧州大陸22市場の直販物流をZEOSへ ↗ — 一次情報
- M&S:2026年9月26日まで26週間の半期決算 ↗ — 一次情報
- Zalando:2026年第2四半期決算(先行事例) ↗ — 一次情報



