カートにツナを入れた客には、マヨネーズの値段を変える。そんな仕組みを記した特許について、Walmartが「使わない」と言い切った。10月6日付のRetail Diveへの回答では、更新もしないと表明している。個人別の値付けをしないという説明に加え、疑いの根拠とされた特許にも具体的な方針を示した。

対象は、2023年6月に登録された米国特許US11687872B2。電子棚札を遠隔で制御する仕組みで、特許の説明には、客がスキャンしたカート内の商品を手掛かりに別の商品の価格を変える例がある。ツナとマヨネーズも原文に登場する。ただし、特許が記すのは価格を変えられる仕組みであって、Walmartが実際に客ごとに値上げした記録ではない。

この違いが論争の中心になった。政策提言団体Groundwork Collaborativeは10月5日、複数の特許を調べた報告を公表し、同社が個別価格の基盤を開発していると批判した。Walmartも同日付の公開書簡で、同団体のこれまでの主張に反論した。技術の可能性と実際の営業方針を混同していると述べ、ツナを買う客にマヨネーズを高く売ることは現在も将来もしないと説明した。

個人別の価格を否定するだけなら、新しい話ではない。同社は今年3月の電子棚札の説明でも、同じ店舗の価格は誰が買うかによって変わらないと記していた。9月25日のCEO書簡でも、所得や購買履歴、急いで必要としている事情を使った値上げを否定した。今回加わったのは、一般的な方針に加え、疑いの根拠にされた一つの特許を使わず更新もしない、という具体的な回答だ。

電子棚札への警戒も、Walmartだけに向けられたものではない。2024年には米上院議員がKrogerに対し、棚札技術と個人情報を価格設定にどう使うかを照会している。紙を画面に替える話が、どこまで客を見て価格を変えるのかという疑問につながってきた。だから、棚札の仕組みを説明するだけでは、疑われている用途への答えにならない。

一方で、Walmartが電子棚札そのものを引き揚げる話ではない。3月の会社説明では、承認した価格変更を従業員が反映し、以前は数日かかった更新を数分で終えられるようになったという。棚札のLEDは、補充する棚やネット注文の商品を従業員が探す手助けにも使う。価格を表示する作業を速めることと、客に合わせて価格を決めることは、別の判断として残る。

ただし、「更新しない」を「特許が失効した」と読み替えてはいけない。米国特許商標庁の説明では、特許を維持する料金には支払期限と猶予期間がある。今回確認できたのは会社の今後の方針であり、この特許が正式に失効したという記録ではない。また、一つの特許の不使用宣言で、団体が問題にした他の技術やデータ利用への疑問まで解消したことにもならない。

電子棚札の導入を続けながら、客の買い物の中身を使う一つの仕組みは採用しない。その二つを分けたのが、今回の回答だった。電子棚札で何ができるかと、店が実際に何をするかは違う。批判団体が特許を具体的に挙げたことで、会社の回答も「個人別の値付けはしない」という方針から、一つの特許を使わず更新しないという説明へ踏み込んだ。

SOURCESこの記事の情報源

  1. Retail Dive:Walmartの特許に関する独自回答 ↗ — 報道・専門媒体
  2. Walmart:10月5日の公開書簡 ↗ — 一次情報
  3. 米国特許 US11687872B2(Google Patents掲載公報) ↗ — 一次情報
  4. Groundwork Collaborative:The Walmart Watchtower ↗ — 一次情報
  5. Walmart:9月25日のCEO書簡 ↗ — 一次情報
  6. Walmart:3月2日の電子棚札説明 ↗ — 一次情報
  7. USPTO:特許の維持と失効の手続き ↗ — 一次情報
  8. 米上院議員Warren:2024年のKroger宛て照会 ↗ — 一次情報