豪州のKmartが売っていた、89豪ドルのカメラ付き眼鏡。そのプライバシーをめぐり、10月7日、当局が正式な調査を発表した。対象はKmartではない。眼鏡につなぐスマートフォンアプリ「HeyCyan」を運営する、中国の会社だ。Kmartとは違う店で買った眼鏡も、同じアプリを使っていた。
Kmartは自社ブランドAnkoで眼鏡を売っていた。一方、豪情報コミッショナー事務局(OAIC)によると、HeyCyanはBig WのマーケットプレイスやAmazonなどで売られる低価格の眼鏡にも使われている。音楽や通話、音声アシスタントなどの機能に必要で、眼鏡が集めた情報をアプリが受け取って処理する。店や商品名が違っても、利用者の情報が同じソフト会社につながる構造だ。
当局は8月12日以降、関連各社に録音・撮影の仕組みや情報の保存先などを照会していた。HeyCyanを運営するShenzhen Qingcheng Future Technologyからは回答がなかった。今回の正式調査で、当局は情報提出を強制する権限も使って確認を進める。調査の開始は、違法行為の認定を意味しない。
売った店と、情報を持つ会社が違う
今回の当局説明には、販売側にとって見過ごせない区別がある。機器を売るだけで、そこから個人情報を集めていない小売会社には、その機器に関するプライバシー法上の義務が生じない場合がある。義務を負う主体として想定されるのは、実際に情報を集めて保有する会社だ。
だからといって、店が商品を選ぶ責任までなくなるわけではない。OAICは、消費者が複雑な情報の行き先を評価するのは難しく、小売側が販売する製品のプライバシーリスクを調べることが期待されると説明する。HeyCyanを使う機器の販売店に対しても、取り扱いを続けるべきか検討するよう求めた。一律の販売禁止命令ではない。業界媒体Mediaweekは同日、Kmartが89豪ドルの商品を撤去したと報じた。ただし、同記事ではオンラインと実店舗それぞれの対応範囲までは分からない。
不安は、眼鏡で周囲の人を気づかれずに撮影できることだけではない。公共放送ABCは9月、専門家による独立検証を報じた。調べたのはTemuとBig Wのマーケットプレイス経由で購入した2台で、メールアドレスや生年月日、画像、動画などが第三者にアクセスされるおそれのある弱点が見つかった。Kmartの実機を検証した結果ではないが、同じアプリを使う製品を売る小売店にも、確認を迫る内容だった。
修正の評価も一致していない。ABCの10月7日の報道によると、運営会社の法務担当者は、指摘された不具合を技術者が修正したと回答した。一方、ABCの検証に協力した専門家は、10月2日時点で改善はあったものの、多くの修正が機能していないか不完全だったとしている。
買い手に見えるのはAnkoというブランド名と、Kmartという売り手だ。しかし、機能を使う段階では、別の会社が提供するアプリに頼る。売り場から眼鏡を下げても、そのソフトの安全性や情報の扱いが改善されたことにはならない。当局の調査は、売り場の奥にいる会社に説明を求めている。
SOURCESこの記事の情報源
- 豪OAIC・HeyCyan運営会社への正式調査発表 ↗ — 一次情報
- 豪OAIC・個人情報を持つ会社と販売会社の違い ↗ — 一次情報
- ABC・安価なスマートグラスの独立検証 ↗ — 報道・専門媒体
- ABC・調査開始とアプリ会社の回答、再検証 ↗ — 報道・専門媒体
- Mediaweek・Kmartの89豪ドル眼鏡撤去報道 ↗ — 報道・専門媒体




