マンションの建設に関わっていない。そもそも、建物が完成したときには会社が存在しなかった。それでも、防火改修の費用を負担するよう命じられた会社がある。英国の不動産開発会社Urban Splashをめぐる11月5日の裁決だ。

英国の第一審不動産審判所は、マンチェスターの住宅7棟の改修費として、開発元のUrban Splash Limitedと関連する4社に、合わせて約4650万ポンドの支払いを命じた。多くは、改修に公金を投入した政府への支払いになる。5社がそれぞれ4650万ポンドを払うのではなく、同じ債務について共同で全額の責任を負う。

7棟は2000年ごろから2008年にかけて開発された。2017年のグレンフェル・タワー火災後の調査で、防火上の欠陥が問題になった。改修時にはUrban Splashはもう建物を所有しておらず、政府の基金から同社側に補助金が渡ったわけでもない。建物を直すため先に使われた公金を、最終的に誰が負担するのかが争われた。

今回使われたのは、英国の建築安全法(2022年)に基づく改修費負担命令だ。開発会社だけでなく、法律上の関連者も対象にできる。ただし、関連者に当たることと、実際に費用を負担させるのが公正かどうかは、分けて判断される。政府は2024年に申し立てており、今回、その責任範囲と金額が決まった。

負担を命じられたStubbs Mill LLPは、7棟の完成後に設立された別の事業体である。Urban Splashの経営幹部5人が、自分たちの資金を投じて別の不動産を取得・開発した。もともとの7棟の建設には参加していない。

Stubbs Millの開発には、Urban Splashの事業網が使われた。物件はUrban Splashの会社から取得し、開発や管理でも同社側の力を借りた。その後の資金調達では、物件を他のUrban Splash事業の不動産とまとめて担保に入れるなど、財務上の利害も結びついた。審判所は、こうした取引と共通の支配関係を重ねて、負担を命じる理由とした。

一方、住宅に投資するファンド側の2社には、支払いを命じなかった。こちらもUrban Splashと密接な取引関係があり、同社の創業者はファンドの立ち上げに関わっていた。それでも、ファンドは何をいくらで買うかを独立して決めていた。資産の大部分は、7棟の開発に関与していない投資家のために保有されている点も考慮された。

この2社を代理した弁護士の所属先3VBは、裁決の説明で、影響力を持つことと意思決定を支配できることを区別している。ファンド側の2社のうち、役員が共通していた1社は、法律上の関連者に当たるとされた。それでも、ファンドの性格や投資家の立場を踏まえ、支払いを命じるのは公正ではないと判断された。

Urban Splashは業界媒体Place North Westに、当初の開発に関わっていない会社まで対象となったことへの不満を表明した。今回の負担は事業規模に照らして大きいとも説明している。裁決が出たことと、政府が費用を回収できたことはまだ別だ。

Stubbs Millには、経営幹部の個人出資と、Urban Splashの事業や資金調達が重なっていた。ファンド側では、独立した投資判断に加え、7棟の開発に関与していない投資家の立場が考慮された。建設に参加していないという共通点の先に、審判所は異なる事業と資金のつながりを見ていた。

SOURCESこの記事の情報源

  1. 英国裁判所:Urban Splashほかへの裁決全文 ↗ — 一次情報
  2. Place North West:裁決とUrban Splashの反応 ↗ — 報道・専門媒体
  3. 3VB:住宅ファンド側の弁護士による裁決の説明 ↗ — 一次情報
  4. 英国議会:2024年の改修費請求に関する政府答弁 ↗ — 一次情報