スイスの企業から、日本の企業がロボット事業を買う。その取引に中国が待ったをかけた。ABBは11月5日、ソフトバンクグループによる中国内のロボティクス事業の取得を、中国の外資安全審査当局が禁止したと発表した。世界全体の売却を打ち切るとは言っていないが、中国事業を含む当初の取引は、そのままでは進められなくなった。

買収が発表されたのは2025年10月。企業価値53億7500万ドルでABBのロボティクス部門を取得する合意だった。孫正義氏は当時、AIとロボティクスを組み合わせる構想を掲げた。約7000人を抱え、2024年に23億ドルを売り上げた事業を取り込む。研究段階のロボットだけでなく、既に工場へ納め、顧客を持つ事業が対象だった。

その事業で、中国は最大の市場だった。ABBは中国の顧客に海外から製品を送るだけの会社でもない。2025年7月の発表では、中国向けロボットの9割超を現地で製造し、研究開発を含む事業体制を中国に築いていると説明していた。新しいロボットも上海の工場で生産する。

売り手のABBも、買い手のソフトバンクも中国の外に本社を置く。それでも、取引に含まれる中国内の事業の持ち主は変わる。中国の安全審査制度は、国内への直接・間接の投資を対象とし、国家の安全に関わる重要な製造業や情報技術などでは、事業を実際に支配する権限を得る投資に事前の申告を求める。すでに外国企業が持っている事業だからといって、次の外国企業への売却も認められるわけではない。

では、ソフトバンクへの売却の何が問題とされたのか。そこは、確認できる事実と報道を分けて読む必要がある。ABBの発表は、中国事業の取得禁止をソフトバンクから知らされたと述べるだけで、理由を示していない。

スイスのSWI swissinfoが伝えた英Financial Timesの関係者取材では、中国当局はロボット生産に関わるデータが国外へ移り、AIの学習に使われることを懸念していたという。ただし、データの具体的な内容や、買収によって扱いがどう変わると見られたのかまでは、SWIの報道には記されていない。これを当局が公表した禁止理由として扱うこともできない。

中国事業を外せば売れるのか、別の条件を加えれば承認されるのかも、まだ分からない。SWIの報道によると、通信社AWPが取引全体への影響と次の手順を尋ねても、ABBはこの段階で追加の説明を控えた。

わずか半月前、10月20日の決算で、ABBは売却を2026年10〜12月に完了する想定を示していた。11月5日の発表では、両社は取引について協議を続けるとしている。世界の顧客と生産拠点をまとめて買うはずだった取引は、完了を見込んでいた四半期に、中国事業をどう扱うかという問題を抱えた。

SOURCESこの記事の情報源

  1. ABB:ロボティクス部門売却の更新発表 ↗ — 一次情報
  2. ABB:2025年10月8日のソフトバンクへの売却合意 ↗ — 一次情報
  3. ABB:中国でのロボット開発・現地生産に関する2025年7月発表 ↗ — 一次情報
  4. 中国国家発展改革委員会:外商投資安全審査弁法 ↗ — 一次情報
  5. SWI swissinfo / Keystone-SDA:中国事業の取得禁止とABBへの取材 ↗ — 報道・専門媒体
  6. ABB:2026年第3四半期決算(売却完了見込み・Note 3) ↗ — 一次情報