約8万5000人の顧客がいる携帯事業を買う。その値段は、発表時の顧客数だけでは決まらない。シンガポールの通信会社StarHubが10月8日に公表したMyRepublicのモバイル事業買収では、買収完了時までに移管できた契約と、顧客の支払い状況が代金に反映される。事業の規模を示す人数と、買い手が値段を付ける人数に、どう線を引くのか。

両社の接近は今回が始まりではない。StarHubは2025年8月にMyRepublicのブロードバンド事業を完全子会社化した。2026年8月6日には、すでにStarHubの回線を使う5G顧客に加え、MyRepublicの4G顧客も同じ回線へ移すと発表している。10月8日に新たに合意したのは、回線を貸す関係から、モバイル事業そのものを引き受ける取引だ。

代金の計算に入るのは、StarHub回線への移行を終え、買収完了時に買い手へ契約が移管されている顧客。そのうえで契約が終了しておらず、直近3か月のうち少なくとも2か月分の月額プランについて、更新または新たな支払いがあることを求める。名簿に名前が残っているだけでは、この条件を満たさない。

こうして数えた顧客の人数に、完了前3か月の1人当たり月平均売上を掛ける。4Gと5Gを分けて計算し、その合計に「顧客寿命」という月数の係数と40%を掛けるのが、開示された算定式だ。この顧客寿命については、具体的な月数も算出方法も明かされていない。過去の契約期間を使うのか、将来の継続を見込むのかも資料からは分からず、買収総額をここで計算することはできない。

移行人数の条件を満たした場合には、式で求めた金額とは別にボーナスも支払う。

顧客数を増やす意味は、価格競争のなかで読むと分かりやすい。現地紙Business Timesによると、StarHubの2026年上期のモバイルサービス売上高は前年同期から10.5%減った。同紙は、同社が別の仮想移動体通信事業者redONEの顧客も、低価格ブランドeightへ移したと報じている。顧客基盤をまとめる動きは、今回だけのものではない。

一方、MyRepublicの名前まで消す計画ではない。StarHubはブランドを維持し、顧客は現在の料金プランとサービスを継続できると説明する。買い手が複数のブランドを持つことで、異なる顧客層に応えたいという考えだ。統合によって通信品質や収益がどれだけ改善するかは、今回の発表で実証されたわけではない。

取引の完了は当局の承認などが条件となり、2027年4月30日までを予定する。発表された約8万5000人は、引き受ける事業の規模を知る手掛かりになる。しかし代金を確定させる段階では、実際に移管された契約と直近の更新・支払いをもう一度見る。買収の成否が分かる前から、顧客を引き継ぐ実務の結果が、売り手の受け取る金額に組み込まれている。

SOURCESこの記事の情報源

  1. StarHub・MyRepublicモバイル事業取得の取引条件 ↗ — 一次情報
  2. StarHub・MyRepublicモバイル事業買収発表 ↗ — 一次情報
  3. Business Times・StarHub買収と通信業界再編 ↗ — 報道・専門媒体
  4. StarHub・8月6日のMyRepublic顧客回線移行発表 ↗ — 一次情報