熱で貼り合わせると、生地が焦げる。うまくできたように見えても、小さな穴が開いている。カナダの下着ブランドKnixが綿を使った新商品を開発する途中で、こんな失敗を重ねていたという。縫い目を目立たせないための加工が、綿では難しかった。
9月に発売した「Invisible Cotton」は、綿の肌触り、服に響きにくい仕上がり、吸水機能を一つにまとめようとした商品だ。Modern Retailがデザイン責任者に聞いたところ、開発には18か月、31回の試作を要した。ありふれた下着に聞こえるが、従来のつくり方へ素材を差し替えるだけでは済まなかった。
同社が得意とするのは、生地を熱で接着し、縫い合わせた部分の盛り上がりを抑える方法である。責任者の説明では、従来の化学繊維の混紡に使っていた条件を、そのまま綿に適用できなかった。吸水層も組み合わせる必要がある。肌に触れる生地が心地よければ、他の条件を諦められるという商品ではない。
そこで見直したのは、加工機だけでなく生地そのものだった。短い繊維を取り除いた綿を使い、編み方や密度を調整したという。目指す形を既存の生地に無理に与えるのではなく、その形を保てる生地まで開発を戻したわけだ。
ここで「綿」という名前にも注意したい。公式の商品ページを見ると、吸水タイプのブリーフの身生地は綿68%、スパンデックス32%で、綿100%ではない。吸水部分も複数の素材を使っている。天然素材だけであらゆる機能を実現したという話ではなく、綿の触感を残しながら、伸縮や吸水のために別の素材を組み合わせている。
この区別を外すと、開発の面白さが見えなくなる。素材の名前一つでは、着たときの性能は決まらない。綿の比率、編み方、端の処理、吸水部分との接続まで調整して、初めて一枚の下着になる。買う人には単純な「肌触りがよく、目立たず、漏れに備えたい」という希望でも、工場では複数の条件を同時に満たす必要がある。
ただ、31回という試作の多さは品質の証明ではない。長く着たときのずれや洗濯後の変化、競合品との比較も必要になる。会社が行った着用テストは報じられているが、第三者による長期の比較試験は今回確認できていない。公式の「目立たない」という説明も、すべての服や体形での保証とは扱えない。
Knixの商品には、目に付きやすい新機能が増えたわけではない。むしろ、縫い目や着用中の違和感を気にしなくてよい状態を売ろうとしている。そのために見直したのが、外から見えない編み地だった。完成品が普通に見えることと、つくるのが簡単なことは、別なのである。




