訴えた相手のオフィス近くに、反撃の広告を出す。米調理器具ブランドのCarawayは、大手メーカーとの訴訟を、ずいぶん目立つ場所へ持ち出した。
9月30日のModern Retailの取材によると、同社は訴えられたことを広告や公式サイトで積極的に知らせ、顧客に支持を呼びかけている。大手調理器具メーカーに向けた署名は5万件を超えたという。訴訟対応が、そのまま今年の広告の題材になった。
発端は2月。ティファールなどを持つグループ・セブと、調理器具大手のマイヤーが、Carawayの広告は虚偽や誤解を招くと訴えた。争点は、化学物質の一群であるPFASを使わない自社製品を売る際に、競合の調理器具を危険だと印象づけてよいのか、という点にある。
この対立には前段がある。米国の広告自主規制機関NADは2025年8月、Carawayが自社製品をPFAS不使用、非毒性と説明する根拠は認めた。一方で、競合品が安全ではない、あるいは安全性で劣るという比較には十分な裏づけがなく、広告の中止や修正を勧告していた。
自分の商品に含まれていない。それだけでは、含んでいる他社の商品が危険だという証明にはならない。広告を読む側にはひと続きに聞こえやすい二つの主張を、NADは分けて判断している。
ところが、訴訟を前面に出すと、顧客が答える問いは変わる。製品の安全性を比較するには知識が要る。大企業に訴えられたブランドを応援するかどうかなら、その場で意思表示できる。Carawayの広告は、材料の説明だけでは生まれにくい参加の理由をつくっている。
原告側の弁護士はModern Retailに対し、目的は口封じではなく、正確な広告を求めることだと反論した。Caraway側は、NADの指摘に合わせて広告を修正したと説明している。どちらの主張が認められるかは、応援の数からは分からない。
広告で関心を集めたことと、広告の内容が正しいこと。その距離が、今回の話を単純な成功事例にできなくしている。署名5万件は支持の広がりを示しても、安全性の証拠にも、売り上げへの貢献の証明にもならない。Carawayは訴訟を知られないようにする負担からは離れた。その分、裁判の行方まで顧客に注目されるブランドになった。
SOURCESこの記事の情報源
- Modern Retail・9月30日の取材 ↗ — 報道・専門媒体
- NAD・2025年8月14日の判断 ↗ — 一次情報




