会社は売る。でも、その会社の商品は顧客に売り続ける。米ギフト通販の1-800-Flowersが9月29日に発表した事業売却には、買収金額の落差より気になる一文がある。

同社は、名入れギフトのPersonalizationMall.comとThings Rememberedを、同じく個別注文の商品を扱うPlanetArtへ約4500万ドルの現金で売る契約を結んだ。あわせて商業契約を結ぶ予定で、PersonalizationMallの一部商品は引き続き自社の顧客へ提供する計画だ。

PersonalizationMallを2020年に買った金額は2億4500万ドル。売却額だけを見ると、買収で広げた事業を安く手放す話に見える。ただ、今回はもう一つの事業も含まれ、保有中の利益や投資もある。二つの金額を引いて投資損失を計算することはできない。

むしろ、何を手元に残すかに方針の変化が表れている。顧客が買いたいギフトをそろえるために、そのギフトを作る事業まで持つ必要があるのか。今回の契約は、商品を届ける接点を残しながら、運営を別の会社に任せる選択だ。

従来の拡大策にも理由はあった。花を贈る顧客に、名入れの食器や記念品も買ってもらえれば、一度獲得した顧客との取引を増やせる。1-800-Flowersは複数ブランドを横断する会員制度を持ち、対象商品の送料優遇などを提供してきた。ブランドを束ねる仕組みは、すでに作っている。

だが、品ぞろえが広いことと、それぞれの事業を自社で持つことの採算は別だ。9月に公表した2026年度の全社売上高は15億ドルで、前年度から10.8%減った。経営陣は資産売却や資金調達も検討すると説明していた。顧客を相互に送れるという期待だけで、持ち続ける事業を決められる局面ではなくなっている。

提携に切り替えれば、相手側の利益も確保する必要があり、商品や納期を動かせる範囲も契約に左右される。所有していた時と同じ利益が残る保証はない。今回の発表でも、継続して扱う商品や取引条件の詳細は明らかになっていない。

それでも、この売却は品ぞろえを狭めるだけの撤退ではない。花を買う人に名入れギフトも勧める発想は残し、そのために会社ごと持つという判断を見直している。顧客に見える売り場はつながったまま、裏側で必要になる資本と運営の負担を変える。買収でつないだ売り場を、次は提携で維持しようとしている。

SOURCESこの記事の情報源

  1. 1-800-FLOWERS.COM:PersonalizationMall.com・Things Remembered売却契約 ↗ — 一次情報
  2. 1-800-FLOWERS.COM:2026年度第4四半期・通期決算 ↗ — 一次情報
  3. Retail Dive:1-800-Flowers to sell PersonalizationMall.com, Things Remembered ↗ — 報道・専門媒体