海外の拠点を大きくする理由といえば、顧客の多さや優秀な人材を思い浮かべる。スウェーデンの法律業務向けAI企業LegoraのCEOがロンドンを評価する理由は、その人材に何を報酬として渡せるかにもある。

9月30日のSiftedの公開記事によると、マックス・ユネストランド氏は、英国の社員向けストックオプション制度がロンドンでの拡大を後押しすると語った。ストックオプションは、一定の条件で将来株式を買える権利だ。会社の価値が上がれば社員にも利益が生まれる可能性があり、成長途上の企業が人を採る際の報酬の一部になる。

ただし、同じ「将来、会社の株を取得できる権利」でも、税金がかかる条件や時期で受け取り方は変わる。英国にはEMIという優遇制度がある。一定の条件を満たし、権利を与えられた時の時価以上で株式を取得する場合、権利行使時に所得税や国民保険料がかからない仕組みだ。売却時の税金までなくなるわけではない。

今年4月6日には、原則として対象会社のフルタイム換算の従業員数の基準が250人未満から500人未満へ、総資産の上限が3000万ポンドから1億2000万ポンドへ広がった。すべての会社への一律の変更ではなく、例外や他の適用条件もある。

ここに、拠点選びにつながる論点がある。優遇が小さな会社にしか使えなければ、会社が育ち、採用を増やしたい時に対象から外れかねない。創業時に株式報酬を配れることと、規模を大きくしながら同じ方法で採用を続けられることは、別の条件になる。

スウェーデンにも、条件を満たす従業員向けオプションの税優遇は存在する。制度がない国との比較ではない。税務当局の案内では、会社の規模や事業年数、受け取る人の働き方などに条件がある。英国の制度と算定方法も違うため、人数の上限だけを比べて、どの会社にどちらが有利かを決めることはできない。Legoraの個別契約に適用される制度も、本稿では確認していない。

それでも、CEOの発言は、資金調達額だけでは見えない採用の競争を示している。投資家から調達したお金を給与として使う方法はある。一方で、将来の成長の一部を社員に渡せれば、会社に参加する理由を給与以外にも作れる。もちろん、その価値は会社の成長や株式を売れる機会に左右され、現金と同じ確実さはない。

会社が成長できる場所と、その成長を社員の報酬に変えやすい場所。この二つが重なるかどうかも、次の採用をどこで増やすかに関わってくる。

SOURCESこの記事の情報源

  1. Sifted:Legora CEO: UK stock options make London expansion a no-brainer ↗ — 報道・専門媒体
  2. GOV.UK:Tax and Employee Share Schemes — Enterprise Management Incentives ↗ — 一次情報
  3. HMRC:ETASSUM50500 — Finance Act 2026 Limits & Exercise Period Changes ↗ — 一次情報
  4. Skatteverket:Skattefri personaloption ↗ — 一次情報