広告の動画を100本つくれるようになっても、100本すべてに配信予算を渡すわけにはいかない。米スーパー大手Krogerが試しているのは、広告を出す前に、売上につながりやすい素材を選ぶ仕組みだ。生成の速さが話題になる中で、限られた予算をどの広告に使うかという判断をAIに手伝わせる。

Krogerは広告分析会社Vidmob、業界団体MMA Globalと、動画・画像広告1934点を調べた。MetaとGoogleのDV360で使った素材を対象に、画面に人がいるか、どんな場面を描くかなどの特徴と、ECの購入につながった成績を照合している。9月末の発表に続き、Vidmobが10月5日に手順を詳しく説明した。

目を引くのは「精度81%」という数字だ。ただし、売上金額を81%の精度で当てたという意味ではない。原典では、購入につながる成績が高い広告か低い広告かを判定する正確さとしている。過去のデータで学習し、別の時期のデータで試した結果だ。

この方向の研究には前例がある。食品会社Kellanovaも2025年に、同じ2組織と広告の事前採点を検証した。そこで予測した主な指標は、動画が3秒視聴される割合だった。今回Krogerが近づこうとしているのは、その先の購入である。見られる動画を選ぶことと、買われる広告を選ぶことは、同じではない。

では、この採点だけで売上が増えるのか。公表資料は、低評価の素材から高評価の素材へ予算を移すと、同じ広告費で購入件数を最大2.2倍にできる可能性を示している。ただ、この数字は将来効果の見積もりだ。資料の後半には、高得点と低得点の広告を実際に配信して比べる検証を、次の段階として挙げている。予測と、予算を動かして得た成果は分けて読む必要がある。

それでも、制作と配信を一緒に考えるきっかけにはなる。新しい広告を増やす前に、既にある素材のどれに予算が配られているかを確かめる。もし弱い素材に多くの広告費が流れているなら、追加制作より、配分を変える方が先かもしれない。AIの役割が、作品を増やすことから作品の選択にも広がる場面だ。

ただ、Krogerの買物客に効いた表現を、別の会社がそのまま使えるとは限らない。目先の購入を予測するモデルが、新しい客層を開拓する広告まで正しく評価できるかも、別の問いになる。過去によく売れた表現を選び続ければ、まだ試していない表現に予算が回らなくなる恐れもある。

広告を安く大量につくれるほど、何を配信しないかという判断にも重みが出る。Krogerが次の実配信比較で確かめるべきなのは、予測に従って予算を動かしたときにも成果が増えるかどうかだ。81%という的中率を、広告主が使える判断に変えられるか。その検証が残っている。

SOURCESこの記事の情報源

  1. Vidmob:10月5日のKroger研究追加説明 ↗ — 一次情報
  2. Kroger・Vidmob・MMA Global:研究原典PDF ↗ — 一次情報
  3. Marketing Dive:Kroger研究の報道 ↗ — 報道・専門媒体
  4. Marketing Dive:先行するKellanova研究 ↗ — 報道・専門媒体