次々と動画が流れるTikTokで名を売った会社が、今度は57分の映画を見てほしいという。米国の下着ブランド、Cakes Bodyが9月に始めた「Cakes Media」だ。視聴者の短い注意をつかむのが得意な会社は、なぜ長編に踏み込むのか。

第1作のドキュメンタリーは、創業した双子の姉妹が会社を育てる過程を扱う。企業発表によると、2024〜25年に撮影し、9月22日にYouTubeで公開した。製品の開発や起業の苦労、投資家に事業を売り込むテレビ番組への出演が題材だ。商品の使い方を延々と説明する企画ではない。

Cakesは、創業者自身が顔を出して話す動画で支持を広げてきた。Digidayの取材で共同創業者は、その人物らしさを外部の広告会社に任せきるのは難しいと説明している。そこで番組をつくる組織を社内に置いた。一方で、広告枠の買い付けは外部に任せている。すべてを内製化する話ではなく、誰の言葉で何を語るかを手元に残す判断だ。

長編には、もう一つ役割がある。Cakesは番組から短い動画を切り出し、SNSでも使う方針だという。一度の撮影で、じっくり見る人にも、通りすがりの人にも届ける材料を得る。短編のたびに新しい話題をひねり出す制作から、まとまった物語を幾つもの入口に分ける制作へ。57分は、全員に最後まで見てもらうための長さとは限らない。

ただし、映画を一本出せば視聴者を自社で抱えられる、というわけでもない。公開先はYouTubeで、切り抜きの配信先もSNSだ。動画をつくる権利を持つことと、次も確実に見てもらえることは別である。配信会社の推薦や視聴者の気分に左右される事情は残る。

費用対効果もまだ分からない。Digidayによると、当面の制作費はブランド認知向けの予算から出しており、初作の費用は公表していない。映画を見た人が何人買ったか、再び番組を見に来たかも確認できない。再生数だけで、広告より安く顧客を獲得できたと判断するのは早い。

それでも、Cakesが選んだ最初の題材には筋が通っている。同社を知らない人にも、突然大きくなった事業を姉妹がどう動かしたかなら、見る理由をつくれる。ただ、創業の物語は何度も使えるものではない。会社は次のシーズンや外部のクリエイターが主役の番組も構想している。二作目にまで視聴者がついてくるか。そこで初めて、人気のある創業者から、見続けたくなる番組へ移れたのかが見えてくる。

SOURCESこの記事の情報源

  1. Digiday:Cakesのメディア内製化を共同創業者に取材 ↗ — 報道・専門媒体
  2. CAKES Body発表:Cakes Mediaと第1作(EIN Presswire配信) ↗ — 報道・専門媒体