広告の大きな画面に出るのは、トップ選手の記録ではなく、街の人たちが走った距離。Hokaは9月、ニューヨークの五つの区を競わせる企画を、運動記録アプリStravaで展開した。参加者が距離を記録すると、それぞれの区の合計に加わる。街角のデジタル広告には、その途中経過が表示された。
HokaのStrava上の案内には、一人ひとりの距離で自分の地域を押し上げようという呼びかけがある。速さで上位を争う仕組みだけでは、目立つのは一部の熟練者になる。距離を足し合わせれば、いつもの練習も地元の成績を変える材料になる。広告に映る数字へ、自分が少し参加できるわけだ。
9月3日のMarketing Diveによると、数字はタイムズスクエアなどの屋外画面で週ごとに更新する計画だった。常時リアルタイムで変わる画面と受け取るのは正確ではない。アプリ、屋外広告、SNSの発信を組み合わせ、同じ企画に何度か出合うようにしている。
9月29日のModern Retailが伝えた取材では、Hokaの担当者は、大会当日を迎えるまでの練習に目を向けたと説明している。マラソンの一日は華やかでも、そこへたどり着くまでに走る日々の方がずっと長い。ランナーにとっては自分の生活そのものだが、観客向けの中継にはほとんど映らない時間である。
ブランドがその時間に関わる意味は、単に広告期間を長くすることではない。参加者が記録をつけ、次も走り、仲間と結果を話すなら、広告会社が毎回新しい話題を用意しなくても、企画の中身が動く。Hokaの製品を称賛する言葉ではなく、ランナー自身の行動が次の広告の材料になる。
もっとも、ランニング仲間を応援する施策は以前からある。Hoka自身もStravaで継続的な運動や走行距離を条件にした企画を行っており、アプリとの接点を今回初めて持ったわけではない。今回の特徴は、個人の達成を街の単位へ集め、屋外に見える形で返したことにある。
その設計にも偏りはある。合計距離を比べるなら、参加者が多い地域ほど有利になりやすい。数字は区民全体の運動量でも、ランナーの平均的な強さでもない。また、企画に参加した人が次にHokaの靴を選ぶかは別問題だ。今回確認できた資料には、売上への効果や最終的な参加実績の評価はない。
それでも、靴を履いて日々走る人と話す場所を、表彰台の前だけに置かないという選択は分かりやすい。画面に出る地元の距離は、自分がきのう走った分でもある。Hokaは大会を見物する人への一度の露出に加えて、大会まで走り続ける人が繰り返し気にする数字を、広告に持ち込んだ。
SOURCESこの記事の情報源
- Hoka公式Stravaクラブ:Let’s Race NYCの案内 ↗ — 一次情報
- Marketing Dive:HokaのStrava・屋外広告キャンペーン ↗ — 報道・専門媒体
- Modern Retail:大会前の練習に着目したHokaの施策 ↗ — 報道・専門媒体




