ロボットが、指示した位置まで腕を動かしたと記録した。そのログだけで、本当にそこまで動いたと言えるだろうか。内部のセンサーにずれがあれば、記録と実際の動きは一致しない。工場や人のそばで働く機械なら、外から確かめる手段も欲しくなる。
米データ企業Innodataが9月30日に発表した新しい研究開発ラボは、この確認作業を事業にしようとしている。場所はニュージャージー州。人やロボットの動きを立体的に記録する設備を使い、学習用データを販売するほか、顧客が持ち込むロボットの動作も評価する。
設備づくりにはモーションキャプチャーのViconが協力した。複数の赤外線カメラで体や物の位置を追い、ロボットの内部記録とは別に動きを測る。Innodataは、顧客の指定する条件や、人とロボットが関わる場面での検証を想定している。
例えば、人に物を渡す仕事なら、目的の位置まで手が届いたかだけでは足りない。途中でどの経路を通り、相手へどれくらい近づいたかも確かめたい。
こうした測定自体は新発明ではない。米国立標準技術研究所NISTは以前から、利用者が求める動作をもとに、ロボットの性能を測る試験方法を開発している。移動、物の操作、人とのやり取りなどを、比べられる課題に落として試す取り組みだ。
今回の商売としての特徴は、ロボットを賢くする材料と、賢くなったかを確かめる作業を同じ会社が提供する点にある。学習データが足りない開発チームにも、納入する機械の動作を示したいメーカーにも、それぞれ仕事がある。ロボットを買う側が性能を比較したくなれば、開発元の動画や説明とは別の測定結果にも用途が生まれる。
ただし、外部のカメラで測れば安全が証明されるわけではない。正確に同じ動作をできても、別の環境で適切に振る舞えるとは限らない。どの条件を試し、何を合格とするかが欠けたままでは、精密な数字も性能の保証にはならない。Innodataが公表したのも提供能力であり、顧客の採用数や収益ではない。
人型ロボットの競争は、動く機械を作る会社だけでは完結しない。メーカーが「できる」と説明した動作を、買う側が納得できる形で確かめる。その間を埋める仕事に、学習データの会社が入り始めている。




